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建築家として、地域の課題を見つめ、自ら行動を起こすこと。

CREEKS取締役・広瀬 毅インタビュー

投稿日:2018.11.07

建築家として地域課題に向き合うこと、ソーシャルビジネスの可能性

——現在、コワーキングの手応えはどのように感じていますか。また、〈CREEKS〉ではほかにもクラウドファンディングの普及事業や空き家のリノベーション事業〈CRIF〉なども行なっています。そちらの動きも教えてください。

「コワーキングそのものは安定しています。ただ、家賃が高い都会では、事務所をシェアするコワーキングはそれなりにビジネスとして成り立ちますが、長野では違う付加価値が必要だと感じています。それが“人のつながり”やコミュニティそのものだと考え、起業就労支援と移住・中山間地の課題解決、そして教育・子育ての支援という3つのジャンルでのソーシャルビジネス事業につながっています。ところが、こうした事業は現状ではどうしてもクライアントが単年度予算の行政になりがちで、継続性としては難しい。そこで、行政からの委託業務等のノウハウを蓄積し、自社の事業としてビジネス化していきたいと思っています。クラウドファンディングの〈Show Boat〉もそのひとつです。これは当初、県の事業として全県でクラウドファンディングのセミナーを開催したり、チャレンジをする人のサポートをしていました。そのノウハウを生かし、金融機関と組んで長野県に特化したクラウドファンディングサイトを立ち上げ、自主事業としています。
そして結局、自分たちの強みは建築であるということ。建築を通じて空き家問題も含めたさまざまな課題を “場”づくりで解決していく社会課題に関わろうと立ち上げたのが〈CRIF〉です」

——長野に限らず、全国でいま空き家問題が話題になっています。〈CRIF〉の特徴や強みを教えてください。

「不動産仲介をしているリファーレ総合計画と組んで取り組んでいるのが〈CRIF〉です。近年、リノベーションをしたい人が増加しており、空き家バンクなどの情報も増えていますが、空き家を探したうえで設計者や施工者を探すことはお客さんにとってハードルが高いことなんです。特に空き家を探す段階で専門家のアドバイスも必要です。そこで〈CRIF〉は『空き家を探す』『自分に合ったデザイン』『安心して任せられる施工』をワンストップでお客さんに提供できるメリットを謳っていて、まだスタートしたばかりです」

——そうしたなかで、長野は空き家のリノベーションの活用も盛んですが、広瀬さんがリノベーションをするにあたって意識していることはどのようなことですか。

「リノベーションに限らず、新築でも、どういう場所でどう生活したいか、生活のイメージをもってもらうことを大切にしています。そういう点で、リノベーションの場合は単に住宅のストックを生かすとかレトロな雰囲気が好きというだけでなく、実際に建物があるので、お客さんが広さや動線を具体的にイメージしやすいというメリットがあります」

——コワーキングだけでなく〈CRIF〉やクラウドファンディングなどさまざまな事業に取り組んでいますが、そのアイデアの源泉になっているのはどのようなことでしょう。

「たぶん、人に会うことがいちばんの源泉じゃないでしょうか。面白そうなことをやっている人がいると、自分もやりたくなるんです。一時、自分のことを『好奇心の奴隷』と言っていましたが、学生時代の友人たちからも『お前は建築だけやっていればいいのに、いろいろとやりすぎ』と言われています。実は、僕は40歳くらいまで仕事もそこそこ順調、お酒もあまり飲まないし、タバコも吸わない無難な人生を歩んできました。ところが、独立して何年か経った頃から面白い人たちと出会って、なんだか人生を損しているんじゃないか、世の中にはもっと楽しいことがあるんじゃないかと思っちゃったんですよね。学生時代に弾けていた人もいまは落ち着いて無難な生活をしていますが、逆もありかな、と。だから、いまは設計の仕事だけではない苦労もありますが、楽しいことも多いですよ」

——楽しさも苦労もあるなかで、いまの仕事や活動のやりがいはどのようなことでしょう。

「やっぱり一軒一軒の建物をつくることが好きです。本当は職人的に細かいところまで時間をかけて考えていくのが性に合っていて、引き渡しの際に『自分が思っていた以上のものができた』とお客さんから言われた時のうれしさはいまでも覚えています。それが仕事のモチベーションになっていますね。一方で、最近では工務店などの設計も質を上げてきていて、建築家の過剰なこだわり(笑)はそんなに求められていないのではないかとも思うこともあります。もちろん、僕ら専門家から見るとレベルが全然違うのですが、その違いはお客さんが求めているものなのかどうか。だから、建築家として、もう少し違う建築に対する関わり方があるんじゃないのかなと最近は思っています。リノベーションもそのひとつかもしれません。リノベーションはこれから先どんどんストックが増えていくと予測されるなかで、それを放置するのは建築家として正直ではないと思っています。だから、〈CREEKS〉がやってきた社会課題へのコミットという面でも、空き家の有効活用であるリノベーション事業がいちばん建築と連動しやすいからこそ、本気でやらないといけない。そのうえで、〈CRIF〉がほかとどう差別化できるか、その違いはもっと考えなければいけませんね」

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